芸術的な編み方

竹籠などで見られる特殊な竹の編み方

インテリアとして部屋に置かれる竹かご

輪口編み

中心点から放射線を描くように竹ヒゴが伸びる輪口編み(輪弧編み)は、見ている だけで目が回ってしまいそうな魅惑の竹編みですが、そんなに強烈に目が回って倒れる ような危険な事件は今のところあまり起きてはいないようです。 静止状態ではなく輪口編みの竹ざるを回転させながら呪文を唱えたり、山道をドライブ しながら何時間もそれを見つめ続けたり、焼酎と缶ビールと日本酒とブランデーと コーヒーリキュールとワインをチャンポンで飲み干してから放射状の竹ざるを凝視 すれば気分が悪くなったり頭がフラフラすることもあるでしょうが、体調が万全で 動いていない輪口編みの竹ざるを見つめるだけならばそう危険ではありません。 寝ぼけていたり睡魔と闘っているときなら模様が回転しているような錯覚を起すかも しれないのですが、それだけならば全然危険ではないしノーカウントでいいでしょう。 輪口編みの中央部分は輪になっており、それがこの編み方の名前の由来となっています。 中心から編んでいきますので丸い形状をした竹細工に適した技なのは察することが できるのではないでしょうか、人並みの想像力さえあれば。 丸いのでカゴの底やお盆向けの編み方ですが、強度に不安があるような場合はこれ だけではなく、内部に別で補強用のなにかを敷いて使用されることになります。 いくら弾力のある竹製品でも荷重をかけ続ければ変形したり折れてしまうことも 避けられませんので、過度に信用しすぎてはいけません。

やたら編み

投げやりで勢いのありそうなやたら編みは男性向けかと思っている女性もいますが、 年齢問わず女性にも受け入れられています。 やたらめったら、のやたら編みですので猛烈に編みこんでいそうですが、無造作に ワイルドに竹ヒゴを突っ込んで造形していくのではありません。 隙間を埋めながら長い竹ヒゴ、短い竹ヒゴを多方面から統一性なく編みこんでいきます のですが、太さも不均等なのにバランスが崩れることはありません。 一見適当に見える編みこみ方でも最終形がどうなるのか、計算されたうえでの 無秩序を表現しているのがこの技法なのです。 それなりの腕前がなければ本当に適当な感じになってしまいますが、竹編みのプロ が披露するやたら編みはバランスの取れた美しさが光るでしょう。 芸術の域にまで届きそうなこの編み方はみだれ編みと呼ばれることもあり、美しさ は規則性のある模様を持つ亀甲編みよりも上となることもあります。 不規則な編み目となるので正解はひとつではなく、同じ作品が大量生産されにくい のもやたら編みの魅力でしょうか。 竹かごのように実用品にはあまり向きませんがお部屋を彩る装飾品としての需要 は低くなく、和室にピッタリだと年配者に人気もあります。 製作者のセンスや熟練度により完成度が変わってしまうのが難しいところですが、 本当に上手な人が作った作品は惚れ惚れしてしまいます。

ねじり編み

やたら編みほどアナーキーな感じではありませんが、ねじり編みも魂を揺さぶるような 熱い思いを秘めたデザインとなります。 ねじり込みながら編んでいくこの技法は強度よりもデザインに重点を置いた技で、 ひねくれてはいますが決して無秩序ではありません。 規則正しくねじれているのでむしろ秩序があるでしょう。 性格がねじれている、と言われるとなにか悪口のような気がしてイラッとしますが、 この場合のねじれは狙って行われることですし批判の言葉ではありません。 ねじれることは一律で「悪」と断じる事はできず、場合によっては必要だったり 有効であるケースもあるので、悪意を持って放たれるとは限りません。 はちまきをねじったりする人だっていますし、意味があってわざとそうすることも あるのですが、ねじり編みもそれに該当するのです。 平らな竹ヒゴをストレートに編むと整然としておりスッキリした気品がありますが、 まっすぐすぎて面白くはありません。 もっと遊び心が欲しい、捻りを加えたい、そんな時にこのねじり編みが活躍します。 まるで海面を流れる穏やかな波のような模様で、目を閉じて表面を指先でなぞれば 潮の香りがしそうなほどの海っぽさがあります。 ですが舐めても塩味はしませんので、お腹が空いたときに役立つかといったら そんなことはなく、竹の味しかいたしません。